団員インタビュー Vol.2 コンサートマスター 田中 亮伍

団員インタビュー第2回目は、コンサートマスターの田中 亮伍(たなか りょうご)さんです!

コンサートマスターとは、簡単に言うと、楽器を持っている人たちの“まとめ役”で、指揮棒では示しきれない演奏の細かなニュアンスなどを奏者に伝えます。客席からステージに向かって見て、指揮者のすぐ左側にいるヴァイオリン奏者を指します。(通称「コンマス」、女性の場合はコンサートミストレス、通称「コンミス」と言われます。)

ヴァイオリンの腕は言わずもがな、コンマスとしての貫禄たっぷりですが、お話しするととても軽快でユーモラス(笑)。そんな彼の魅力が詰まったインタビューとなりました!


シュタール・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務めてられていますが、コンサートマスターとはどのような役割ですか?


 一言で言えば、ザ・中間管理職です!

オーケストラでいうところの社長は、言わずもがな、指揮者です。そして、社長の下にはたくさんのプレイヤーがいます。その間に挟まれた肩身の狭い人が、コンマスです。

 社長から見れば1人のプレイヤーに過ぎませんが、みんなの演奏が上手く行かない時は、何故かコンマスが怒られます。逆に、みんなの演奏が上手いと、何故かコンマスが褒められます。そんなポジションだからこそ、上手いことやると、指揮者にも他のプレイヤーにも自分のやりたいことを提案できますし、それこそがコンマスの醍醐味だと思っています。


今回はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲でソリストの石上真由子さんと共演されますね。

ソリストがいる協奏曲においては、オーケストラ単体で演奏する交響曲などと比べ、どのようなことに気を付けて演奏、練習されていますか?


 ソリストがいる協奏曲においては、多くの場合、ソリスト1人に対して数十人のオーケストラプレイヤーがいます。オーケストラが爆音を出すと、ソリストの音がかき消されてしまいますが、小さい音で弾けばよいというわけでもありません。その辺りのバランスを取ることが非常に難しいので、うまくバランスを取ることを意識しています。

 今回は、石上真由子さんという素晴らしいソリストと共演できるので、彼女の良さとオーケストラの良さのどちらも際立つ演奏にしたいです。


先日、石上真由子さんとの初合わせをしてみて、いかがでしたか?


 実は小学生の頃に、石上さんの演奏は何度か拝聴したことがあります。日本音コンで賞を取られた時のテレビ番組も見ましたし、今回、初めて共演することができて夢のようです。

 先日の初合わせでは、曲を作っている段階ということもあると思いますが、オーケストラの動きにご自身の演奏を柔軟に合わせてくださっていたので、アンサンブルが上手な方だなという印象でした。今後の練習を通して、私たちオーケストラも石上さんの演奏にもっと寄り添っていきたいと思います。


ヴァイオリンはいつから始めたのですか?


 ヴァイオリンは3歳から始めました。姉がもともと習っていたことから、私も自然と始めることになったのですが、オーケストラの経験はほとんどありませんでした。小学4年からサッカーを始めたのですが、特に中高はサッカー漬けの毎日だったため、大学生活ではもう少し時間に余裕を持ちたいと思い、「練習は週3日」という情報だけを頼りにオーケストラ部に入部しました。

 そんなこんなで楽しいオケ生活をスタートした矢先、神大オケの20ほど上の先輩から、僕が指揮をするオケに乗らないか、ついでにコンマスをしないか、と誘っていただき、コンマスデビューをすることになりました。初コンマスを通して、コンマスはどうやら自分の意見を主張できるということ、曲によってはコンマスソロというものがあるらしい、という2点を知ったことをキッカケに、その後も事あるごとにコンマスに立候補する機会が増え、現在に至ります。


田中さんがコンサートマスターをされる上で、大切にしていることは何かありますか?


 2点ありますが、1点目は周りの音をよく聴くことです。これは、オーケストラの経験がある人であれば、誰しも言われたことがあることだと思いますが、言うは易し、いざ実践しようと思うとかなり難しいですし、私もまだまだ満足にできません。なぜ難しいかというと、オーケストラ全体が出している音と各パートが出している音の両方を聞かないといけないからです。経済用語っぽく言うと、オーケストラの音をマクロの聴点とミクロの聴点のどちらからも聴かないといけません。「全体的にはどういう点がイケてない、その理由は、あのパートとあのパートのどこがズレているからだ」みたいなことを一瞬で聴き分ける必要があります。

 そして、そのように聴き分けると、直した方がよい点と直すべき人やパートがしばしば発見されるので、その人やそのパートに指摘をする必要があります。大切にしている2点目は、そういった指摘をする際の伝え方です。伝え方一つでオーケストラの雰囲気は大きく変わるため、よい雰囲気作りという観点からも伝え方はいつも意識しています。


様々なオーケストラでコンサートマスターを経験されているとのことですが、その中でシュタール・フィルハーモニー管弦楽団はどのようなオーケストラだと感じていますか?


 みんな本当にいい方ばかりです。大学は違えど大学時代からよく知っている方たちで、一緒に演奏するのが楽しいメンバーばかりです。そんなメンバーだからこそ、純粋により良い音楽を追求することができていると思います。ベートーヴェン、モーツァルト、ロッシーニ、それぞれの作曲家の思い描いた音楽を時間のある限り追求していきたいと思います。


クラシックは敷居が高いと思われる方が多いと思うのですが、田中さんが考えるクラシックの魅力や楽しみ方はありますか?


 なかなか生でオーケストラなどクラシック音楽を聴く機会はないと思いますが、テレビ番組やCMなど実は耳にしている機会は多いはずです。ですので、例えば、目をつぶって、この音楽に物語をつけるとしたらどんな物語だろうかを想像しながら聴くと、楽しく聴けると思います。


田中 亮伍 (たなか りょうご)


1994年2月24日生まれ。

ヴァイオリンを始めて間も無く、とある曲を1日に100回弾くよう先生に言われ、母が50マスの数字盤で数えてくれたのだが、51回目に、埋まったはずのマスが空っぽになったのを見てギャン泣きした。その後、練習が好きになることはなかったが、大学入学と同時にオーケストラ活動を始め、神戸大学交響楽団のコンサートマスターを務める。

第18回KOBE国際音楽コンクール最優秀賞・兵庫県知事賞受賞。

現在は関西の鉄道会社で会社勤務の傍ら趣味のヴァイオリンを続けている。

シュタール・フィルハーモニー管弦楽団

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