団員インタビュー Vol.4 トランペット 穐山 大輝

団員インタビュー第4回目は、トランペットパートの穐山 大輝(あきやま だいき)さんです!

華やかな印象のトランペットですが、オーケストラでの役割は時代とともに変化してきたそうです。金管楽器の魅力をいろんな角度からたっぷりとお話ししてくださいました!

トランペットはオーケストラの数ある楽器の中で、最も華やかな楽器といえると思うのですが、オーケストラにおけるトランペットの役割はどのようなものですか?


 華やかと言ってもらえてとても嬉しいです。トランペット奏者としては、他の楽器の方々が華々しく演奏しているのを眺めている時間の方が長いので、どちらかというと寡黙な楽器のつもりです(笑)

 オーケストラにおけるトランペットの役割は、その時代や地域、また作曲家によって様々です。例えばオーストリアの作曲家ブルックナーやマーラーは、トランペットを教会のオルガンの響き、そこから転じて天上の世界、神々の意思を表す楽器として用います。それは、時に人々に過酷な試練を与え、一方では人々を救済する天使の音色となります。

 あるいはロシアの音楽では、勝利や興奮など、人々を鼓舞する際に必ずトランペットが登場します。こうしたヒロイックな役割を演じられるのは、トランペットの魅力の一つだと思います。

 逆に、人々の心情にそっと寄り添うような場面では、あまりトランペットは使われないですかね(笑)そういう時はお客様と一緒に弦楽器や木管楽器の音色に酔いしれています。


今回は“古典派”に焦点を当てた曲目となっていますが、古典派の時代の金管楽器はどのような位置付けだったのでしょうか?


 古典派のオーケストラにおけるトランペットとホルンの役割は少し違っていると思いますので、ひとまずトランペットからお話しします。

 古典派のトランペットとは、一般的にはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンを指すと思いますが、よく言われる事としては「打楽器としての役割」です。当時のトランペットは出る音が限られており、旋律楽器としては使いにくかったと思います。また曲の展開が複雑に進行していく場面でもあまり出番はありません。そのため打楽器と一緒にリズムを作り出すことがほとんどです。

 これだけを聞くとつまらなく感じるかもしれませんが、実際に古典派音楽に打楽器とトランペットが加わる効果は絶大です。少し当時のことを想像してみてください。今でこそ楽器の性能も奏者の腕も上がったオーケストラ界隈ですが、当時のオーケストラというのは、小編成で各楽器の音程や音量にも限界があり、またいわゆる「全員でリズムの揃った演奏」ができるオーケストラは稀でした。そうした中で、リズムでしっかりと音楽を進め、また【ド・ミ・ソ】のような綺麗な和音で音楽のスケールを広げるトランペットの音色を、聴衆はもちろん他の演奏者達も心待ちにしていたことでしょう(笑)

 音楽における予定調和、いわば聴きやすさは、トランペットによって初めて確かなものになるのです。というと少し大げさかもしれませんが(笑)


 今回は古典派の作曲家としてモーツァルトとベートーヴェンの曲を演奏しますが、モーツァルトのコンチェルトにはトランペットは登場しません。トランペットの有無で印象がどう変わるのか、そんな視点で聴いてみるのも面白いと思います!

なるほど。古典派のトランペットは私たちがイメージするものとは少し役割が異なるようですね。ちなみに、古典派におけるホルンはどのような役割だったのでしょうか?


 ホルンは、当時から音の自由度も高かったので、トランペットより沢山の役割が求められます。

 起源が狩の角笛ということもあり自然や森のモチーフとしてよく使われますし、特にベートーヴェンはホルンの音色のふくよかさから木管楽器とともに旋律やハーモニーを奏でたり、音量が大きい箇所ではトランペットとともに打楽器の役割をしたり…

 オーケストラの楽器の中で唯一ベル(音の出る部分)が後ろを向いていることもあり、音色が壁伝いに広がるためその包容力は随一です。古典派を始めとした多くの作曲家があらゆる曲にホルンの深い音色を求めました。例えば今回演奏するモーツァルトのコンチェルトは、管楽器はオーボエとホルンだけで、ホルンの音色でオーケストラ全体を包み込んでいると言っても過言ではありません。きっとホルンの魅力を存分に感じていただけると思います。

 ちなみにベートーヴェンより少し後の作曲家、ロベルト・シューマンはホルンのことを「オーケストラの魂」と表現したとか…


オーケストラの魂!確かにホルンの響きは包み込むようなあたたかさがありますよね。

さて、トランペットにはいくつか種類があるそうですが、それぞれどのような特徴がありますか?


 トランペットはロータリー式とピストン式に大別されます。ロータリー式は横向きに構える楽器で、ピストン式は縦向きに構えます。

 ロータリー式は、古くからオーケストラで使われていたトランペットを起源としており、太く柔らかな音色が特徴です。どんなに音量を鳴らしても決して他の楽器の邪魔をしないため、古典派をはじめとするドイツ音楽では重宝します。太くまろやかな赤ワインのような高貴な音色です。

 ピストン式は、ロータリー式よりも少し前に、ボタン(ピストンバルブ)によってどの音でも出せる楽器として開発されました。ロータリー式より華やかで刺激的なシャンパンみたいな音色がします。旋律でより目立つのはピストン式でしょうか。ロシアやアメリカの音楽をする時にはこちらを使う事が多いですかね。日本ではピストン式が圧倒的に馴染み深いと思います。吹奏楽やジャズにもピッタシです。

 字面では全く伝わらないと思うので、気になる方はぜひホールまでお越し下さい!!

 他の分け方としては、B♭管とC管があります。先ほどお話ししたようにトランペットは昔出る音が限られていましたので、いろんな音を出そうと思ったら様々な種類の楽器を準備するしかなかったのです。その名残りとしてB♭管は「ド」の音がピアノの「シ♭」、C管は「ド」の音がピアノの「ド」の音になります。ロータリー式とピストン式それぞれにB♭管とC管があります。


そんなに種類があるんですね!曲などによって楽器を使い分けるとなると、とてもお金がかかりそうですね(笑)


 トランペットは単価は比較的安いのですが、これらを全て揃えようと思うとだいぶお金がかかります。「何本買うの?」「どこに置くの?」「どこで練習するの?」この3つは事前に決めておかないと夫婦喧嘩の原因になりますのでご注意を。

 でも、必ずこの楽器で吹く、という指定はありません。曲によって自分のイメージに一番近い楽器を選んで吹けばいいのではないでしょうか。


トランペットを始めたのはいつですか?


 父親の影響で幼少期から触れてましたが、一応小4で小学校の鼓笛隊とともに始めました。

両親とも田舎のアマチュアオーケストラで演奏していましたので、私も小5くらいからジュニアオーケストラやアマチュアオーケストラで吹いており、今でも続けています。


様々なオーケストラで演奏されることが多いと思うのですが、その中で、シュタール・フィルハーモニー管弦楽団はどのようなオーケストラだと感じていますか?


 自画自賛になるのですが、これほど若くて上手な演奏家が集まるアマチュアオーケストラは見たことがありません。リーダーの阿曽沼さんを中心に、とにかく良い音楽をしたい!そしてクラシック音楽の良さを、普段クラシックに馴染みのない方々にも伝えていきたい!そんな高い志をひしひしと感じます。

 指揮者の大山先生はもちろん、演奏者からも大いに刺激や充実感が得られるオーケストラです。

きっとお客様にも楽しく、濃密な時間を過ごしていただけると思います!


穐山 大輝 (あきやま だいき)


鳥取県米子市生まれ。

高校までは地元を中心にオーケストラやアンサンブルで活動。

大学時は京都大学交響楽団でトランペットパートトップ、学生指揮を務める。

現在は高校教師の傍らオーケストラ活動を継続中。

シュタール・フィルハーモニー管弦楽団

〜シュタフィルは、あなたと一緒にクラシックの可能性を探求し続けます〜

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