チェリスト 諸岡拓見さんへのインタビュー
今回のシュタフィルの演奏会には、大阪フィルハーモニー交響楽団チェロトップ奏者の諸岡拓見さんを首席客演奏者にお迎えします。
諸岡さんは、音楽大学で専門的に学ばれていたわけではなく、一般の大学に進学、京都大学交響楽団に所属されていました。そしてその後、大阪フィルハーモニー交響楽団へ入団されたという異色の経歴の持ち主です。
今回の演奏会には、諸岡さんと同じ京都大学交響楽団のOB・OGもたくさん出演しています。そこで、諸岡さんの二つ後輩の吉貞祥護さんと加藤茉里子さん(いずれもヴァイオリンパート)にインタビュアーとして、諸岡さんの素性と本音を聞き出してもらいました。
アマチュアオケとプロオケの両方を経験している諸岡さんにしか語れない、両者の違いやそれぞれの良さなど、貴重なお話を伺うことができました!
加藤:改めまして、今回はよろしくお願いします!まずは、今まで実はあまりお聞きしたことがなかった、チェロを始められたきっかけについてお聞きしたいです。
諸岡:5歳くらいの時になりますが、当時名古屋に住んでおり近所にスズキメソードのヴァイオリンとチェロの教室があったのですが、千葉の年上のいとこが同じスズキメソードでヴァイオリンを習っていた影響もあり、兄である私がチェロ、ひとつ下の妹がヴァイオリンという形で同時に始めたのがきっかけです。
あくまでも情操教育の一環で、との意図だったと聞いております。(笑)
吉貞:いとこさんの影響だったのですね!僕も同じです(笑)。やはり、楽器を始めるにあたっては身近な人の影響が大きいですよね。
吉貞:次は、学生時代の話を少しお聞かせください。僕たちも、京大オケでは大変お世話になりました。同じ舞台で演奏していたことが、すでにもう懐かしいです(笑)。数多くの定期演奏会に出演されていますが、京大オケで演奏した中で、特に印象に残っている曲はありますか?
諸岡:今でも一番思い入れのある曲は、マーラーの9番です。京大オケでは5年に一度東京公演をやるのですが、2回生のときにそれが回ってきて、運良くトップ(首席奏者)をさせていただきました。
オーケストラを始めたのが大学に入ってからなので、まだあまりオーケストラ演奏に慣れていない中でいきなりマーラーのしかも9番で。パート譜が31ページあって、まず音を並べるのが訳がわからないくらい難しいし、音楽的にもアンサンブルをするのも難しくて大変でした。
でもこの大曲に皆で挑もうという空気がものすごくあって、練習中のギスギスした雰囲気だったり飲み会で大騒ぎしたりとにかく全てが激しい時間でした。
指揮が井上道義さんで、井上さんの要求についていくのに皆必死でした。本番のサントリーホールでは本番直前に熱を出して冷えピタを貼ったまま舞台に上がりそうになったり(笑)。
夢の舞台で発熱しながら弾いたからか、音楽に取り憑かれたかのような感覚で弾いたのはあれが最初で最後かもしれません。
加藤:もし本当に冷えピタを貼ったまま舞台に上がっていれば、後世に語り継がれそうですね(笑)。音楽に取りつかれる感覚というのは、なかなか経験できなさそうですが、おっしゃる意味はよく伝わってきます。
加藤:さて、そんな学生時代を過ごされた諸岡さんが、大フィルの首席奏者になられたと伺ったときは、本当に驚きました。京大オケからプロになられた方がこれまでにいらっしゃるのは話に聞いていましたが、まさかこんなに身近な方がプロになられるなんて…。どういうことがきっかけで、プロの道に進もうと決断されたのですか?
諸岡:最初はプロになりたいとは全く思っていなかったのですが、阿曽沼さんのご紹介で、くらしき作陽音楽大学のオペラにエキストラ奏者として参加させていただいたことがあります。それがきっかけで、同大学ヴァイオリン教授の森悠子先生と出会いました。それからご縁があり森先生にくっついて色々な経験をさせていただいた中で、琴線に触れるような音楽の表現世界の深みを味わいました。もっと知りたい、自分なりに追究していきたいと思ったのですが、それを実現するためには片手間ではなく音楽に全ての時間を割くという決断をするしかないという考えに至りました。
と、ここまでは綺麗事で(笑)、実際のところは大学の勉強などそっちのけでしたので一般就職は難しいなーと思っていましたし、音楽を通じて大山先生をはじめとした色々な方との出会いがあったり、コンクールで入賞したりしているうちに、気づいたらという感じでしょうか。
加藤:やはり、ご縁って本当に大切なものですね。「音楽に全ての時間を割くという決断」、言葉の重みを感じます。
吉貞:過去の振り返りはこれくらいにして、今のお話もお聞きしたいです。諸岡さんが大フィルに所属されて数年が経ちますが、プロのオーケストラに入ってよかったことのひとつを教えてください。
諸岡:そもそもオーケストラの中で演奏することが好きですし、オーケストラ作品にも大好きな曲が沢山あるのですが、プロオケにいると、素晴らしい音楽性を持った指揮者やソリストとコンスタントに接することができます。そしてその方々と至高のオーケストラ作品の数々を隅々まで共有できることが何より勉強になりますし、幸せなことだと思います。
特に、大フィルの尾高忠明音楽監督は本当に素晴らしい指揮者で、今この方の率いるオーケストラの中にいることは、自分の人生にとって非常に貴重な経験になっていると感じます。
吉貞:なるほど、やはり素晴らしい音楽性をもった方々と日々接するというのは、オーケストラメンバー方にとっても貴重な経験なのですね。そういう意味で、今回シュタフィルで、プロの方々とご一緒できるというのは、私たちにとって本当にありがたい、貴重な経験となっています。
加藤:諸岡さんはアマチュアオケでの経験を経てプロオケに入団されましたが、そういった経歴を持つプロ奏者はそう多くはないと思います。アマオケとプロオケの両方を経験した諸岡さんだからこそ感じる、アマオケの良さは何だと思われますか?
諸岡:プロオケは総じて年に100回ほどの演奏会をこなし、ひとつの演奏会のためのリハーサルは1~3日間しかありません。その忙しさやリハーサルの短さをカバーしているのは言うまでもなくプロ奏者ひとりひとりの技術と経験ですが、どうしても効率が求められてしまうのも事実です。
それに比べてアマオケではひとつの曲を仕上げていくのに長い期間を設けることができます。その曲をどのように演奏するかということをじっくり考え、こだわり抜く時間が与えられていると思います。
また、アマチュアの演奏会では、クオリティそのものよりも音楽への情熱や気迫のほうが上回ったりしますよね。コンサートを開きお客様を招いて演奏するという意味において、プロアマの違いは無いと思っていますが、お客様もただ上手なだけの演奏が聴きたいわけではないと思うのです。時間をかけてじっくり煮詰めた、自分たちのイメージした音楽を目指すというプロセスを持てることはアマオケの良いところだと思います。
吉貞:僕たちアマオケしか経験していない身としては、練習期間が数ヶ月に及ぶことは当たり前のように感じますが、数日で仕上げるプロからするとそれが魅力のひとつなのですね。
加藤:確かに、何度も練習することで初めてその箇所の良さが分かることもよくあります。時間をかけるからこそ表現できるものがあることがアマオケの強みなのですね!
吉貞:ここまででも諸岡さんの音楽に対する想いはすごく伝わってきていますが、改めて、諸岡さんにとって音楽の魅力は何かを教えてください!
諸岡:良い音楽を聴いていると、感情が揺さぶられたり、安らぎを感じたり、踊り出したくなったり、悲しくなったり、風景を想起させたり、ただ振動を感じたり、温度や匂いを感じたり、懐かしい気持ちになったり、奏者や作曲家の思いや哲学を感じ取ったり…このように、気持ちの面と感覚の面で自分に様々な影響があることに気づきます。
そしてその反応が同じものを体験しているはずの他人とまったく違ったり、はたまた共有しているなと感じたりすることがあります。そこが音楽の面白いところだと思います。
このように音楽は人間の感情や感覚の深いところに訴える力があるものだと思っているので、気心の知れた親しい人の音楽を聴いたり、一緒に演奏したりすることは何よりも幸せなことです。
加藤:素敵なお言葉をありがとうございます!音楽に関われるって、本当に幸せなことですよね。社会人になって、改めてひしひしと感じています。
加藤:最後に、今回の演奏会への思いを一言お聞かせください。
諸岡:シュタフィルのメンバーには学生時代に一緒に演奏した仲間が大勢いるので、とてもわくわくしています。
また指揮の大山平一郎先生の作る音楽か大好きなので、先生の思い描く音を具現化できるよう精一杯がんばりたいと思います!
加藤:私たちも、今回再び諸岡さんとご一緒できることとなり、すごく嬉しいです。本番当日はよろしくお願いします!
吉貞:よろしくお願いします!今日はたくさんの質問にたっぷり答えていただき、ありがとうございました!
諸岡 拓見 (もろおか たくみ)
三重県出身。5歳より才能教育でチェロを始める。2005年シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭でソロを演奏。2010年同志社大学入学と同時に京都大学交響楽団に入団。第26回、27回京都フランス音楽アカデミーにて受講生選抜コンサートに出演。第69回全日本学生音楽コンクール大学の部第2位入賞。現在大阪フィルハーモニー交響楽団チェロ・トップ奏者。
本日で今回の演奏会における団員インタビュー、アーティストとの対談記事は最終回となりました…!
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
ぜひ、シュタフィルにご興味を持っていただき、そしてこんな私たちが奏でる音楽を
当日みなさまと会場で共有できますことを楽しみにしております!!
シュタール・フィルハーモニー管弦楽団
古典派の神髄に迫る ~若きチェンバーオケの挑戦~
日 時:2019年2月24日(日)
開 演:14時00分 (開 場:13時30分)
場 所:阿倍野区民センター 大ホール
曲 目:L.v.ベートーヴェン 交響曲第2番 ニ長調
W.A.モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ長調
G.A.ロッシーニ 『アルジェのイタリア女』序曲
チケットはこちらより購入できます。
団員一同、みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
絶対に後悔させませんよ!!!笑
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